トップバナーイメージ
島崎藤村といえば・・・
2017.03.15

島崎藤村のご婦人である静子さんの引越しにまつわるエピソードの紹介です。それは、静子婦人が退去した後の家の話です。

次の入居者が掃除をするためにその家を見にいった時、畳の上にはごみ一つなく、押入には、まだインクの匂いのするような新聞紙が上の段と下の段にちやんと敷いてあったのだそうです。そして、押入れの隅に小さな包みが置いてあり、忘れ物と思って取り上げてみると、忘れ物ではなかったのです。その証拠に包みの上に「次にお住まいくださる奥様、御元ヘ」と。書いてあったのだそうです。

包みの中から出てきたものは真新しい障子紙と丹念に手縫いした雑巾でした。そして、『引っ越しに当たり、障子も張り替え、縁もきれいに拭くべきでありますが怠ります 。どうぞこの障子紙と雑巾をお使い下さいませ』 とのメッセージが添えてあったのだそうです。次の入居者のご夫婦は感動のあまり涙がこぼれ出たとのことです。この次の入居者は、名エッセーとして高く評価された高田保さんという方で、『ブラリひょうたん』という随筆に紹介されています。

このような心温まる話に近年出会っておりません。逆にゴミ屋敷のニュースの方が多いのではないでしょうか?私たちも業務の中で、不良店子の後始末を行なうことが間々ありますが、先日もゴミ屋敷状態の部屋の処理を行ないました。静子婦人の思いのかけらも無い部屋でした。時代が違うといわれればそうなのかもしれません。しかし、静子婦人のこの時代でもこのような思いやりのある方は、少なかったはずです。今私たちが見習うべきことと思うのです。

ある会社に訪問した時に、社内を見せて貰いました。壁という壁に、報告・連絡・相談を意味する『報連相』の紙が貼ってありました。そして、コピー機には、『キャンセルボタンを押してからコピーをしましょう』と紙が貼ってありました。恐らくミスプリントを防止するためなのでしょう。案内してくれた人に「社員教育に腐心しているのですね。頑張ってください」と伝えました。

報告・連絡・相談ができていないから『報連相』の紙を貼っているのです。そして、静子婦人の精神があれば、次に使う人のために、当然のこととして、キャンセルボタンを押してからコピー機から離れることでしょう。

自分の周りを好転させる思いやりの精神が大切であることの証左だと思うのです。そしてこれは、大げさに言えば、世の中全ての幸せに繋がる精神だと思うのですが、皆さんはそう思いませんか?

  http://credit-n.ru